とーしばブログ

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菅田将暉主演【アルキメデスの大戦】の感想/ 戦艦大和建造までの道のりと東京オリンピック2020の共通点

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こんにちは、とーしばブログのとしです。今回は、[アルキメデスの大戦]を観終わった感想についてです。

この前、初めてアルキメデスの大戦]という映画をアマゾンプライムで観ました。

 

この映画は、太平洋戦争が始まる直前の日本海軍の組織内を舞台にした映画で、菅田将暉演ずる1人の天才数学者が、海軍の戦艦大和建造の予算の不正を暴くという話です。

 

この映画の原作はドラゴン桜で有名な三田紀房氏の漫画ですが、今回は映画版】を観た感想を書こうと思います。

 

僕はこの作品を見て、東京オリンピック2020が終わった今だからこそ面白いのではないか?と思いました。

東京オリンピックの熱気が冷めてた今だからこそ、もう一度考え直すきっかけにもなると思います。 

 

そして、太平洋戦争の日本軍から今の政治家に至るまで、政治家の考え方がほとんど変わっていないということに強い不安を覚えました。

そういう問題意識を持って、この作品を見るとある種の恐ろしさを感じます。

 

日本の象徴とか言って莫大な予算(税金)を投入してしまうところとかが、今でも普通に起こりうる、むしろ今でも起こっていることですね。

 

 

戦艦大和】=(東京オリンピック2020)という視点で見ると面白い

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アルキメデスの大戦]
について、ネットやアマゾンレビューを観ると駄作だという意見をちょくちょく見かけるんですね。

 

派手な戦闘シーンは冒頭の大和が激戦の末に沈没するシーンだけで、とりわけ戦争系の映画が好きな人にはつまらないかもしれません。

 

他にも戦艦長門にだらしなく洗濯物が干されていたりする演出とかも許せないと思うんですよ。

 

でも、この作品って冒頭から言うように戦艦大和】=(東京オリンピック2020)という視点で見ると面白いと思います。

この映画は日本の問題点を見事にあぶり出している政治ドラマとしてめちゃくちゃ面白いんですね。

 

実際にウィキペディアで調べると、実は漫画の作者の三田紀房氏も国立霞ヶ丘競技場陸上競技場]の改修費用のニュースを聞いてアルキメデスの大戦]のストーリーを思いついたようです。

やはり裏ストーリーは、戦艦大和の建造=国立競技場の予算をめぐる問題だったようですね。

太平洋戦争はあくまで題材であって、メインストーリーはどうやらこっちのようです。

 

東京オリンピックの予算は1兆4530億円

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東京オリンピック[開催経費]はなんと1兆4530億円と言われています。

引用した記事では、当初の開催経費は、1兆6440億円よりも2000億円少ないと言われていますが、それでもこれだけの金額を多い少ないと議論できるのか疑問なくらい大きな額です。

 

全体の開催経費のうちオリンピックのメイン会場となる新国立競技場建設費用は、当初は、1300億円だった総工費が最終的には3000億円を超えることになったようです。

 

ここで[アルキメデスの大戦]の劇中に出てくる戦艦大和の建造費を思い出してください。

 

戦艦大和建造費用は1億4503万円、当時の国家予算の4.4%もの巨費を投じて造られました。

さらに姉妹戦艦である武蔵も同じ時期に建造されているので、実際には大和の建造予算の2倍、費用がかかっていることになります。しかも、どちらも日本国民の税金です。

 

戦艦大和東京オリンピックの状況がこれだけ酷似している点でも、アルキメデスの大戦の裏テーマが東京オリンピックの予算をめぐる問題だということが分かります。

 

旧日本軍にしても、現代の政治家にしても【美しい概念】というか【象徴】【イメージ】【空気】などで現実離れした意思決定をしてしまうことが問題と言えます。

 

それを象徴するように、映画の最後に平山中将は「日本はアメリカとの戦争は避けられない、大和は日本の威厳を現す戦艦であり、戦争に負ける時は大和を日本の象徴として沈没させたい」という歪んだ考え方を櫂直に話しました。

 

史実で考えると更に恐ろしいのが、戦艦大和はむしろ『一億玉砕の先駆けとなれ』と敗戦間近の日本で戦意高揚のために利用されました。

結果的に戦艦大和は日本人全てが玉砕するまで戦うという真逆のメッセージを持ってしまったんですね。

 

アルキメデスの大戦の最後のシーンで櫂直が出撃する大和を見て「大和は日本そのものに思える」と言ったのもこういう日本の危うさについて語ったのだと思います。

 

時代は巨大戦艦から空母の時代へ

実はアルキメデスの大戦のでは、冒頭部分の会議と終わりでの艦隊派条約派の議論がこの話の核心になっています。

 

映画の冒頭で【戦艦金剛】に代わる戦艦の建造を決める会議で、条約派のリーダー山本五十六は空母の建造を海軍大臣に提案します。

 

一方で大角大将が率いる艦隊派は、平岡案を支持しており、日露戦争での勝利から大砲による戦艦同士の戦いが戦局を左右する]という考え方を強く持っていました。艦隊派は、戦艦同大和のように一隻で敵の船を何十隻も沈めれるような強力な戦艦を造ることを目指していました。

 

山本五十六は、海軍が戦艦大和を造ってしまうことでアメリカに勝てるのでは無いかという気持ちを軍も国民も持ってしまうのではないかと焦りを感じます。

 

なんとしても大和建造を止めたい山本五十六は、菅田将暉演じる櫂直に大和の建造費の不正を暴く手伝いをしてほしいと依頼します。

 

山本五十六は、アメリカの駐在武官となりアメリカに5年間住んでいた経験を持っていたこともあり、圧倒的な工業力を持つ、アメリカと真っ向から勝負しても勝てないということをよく知っていました。

 

そこで当時新しい兵器だった飛行機に注目して、いち早く時代を先取りした空母を中心とした機動部隊を構築しようとしていたのです。

 

史実でも、太平洋での戦いの中心は空母VS空母でした。空母と戦闘機による戦いで、太平洋戦争は珊瑚海海戦、ミッドウェー海戦マリアナ沖海戦、レイテ沖海戦など空母同士の戦いで制空権を握ることが結果的に太平洋戦争そのものの勝利を決める戦いになっていたのです。

 

海軍の敗北で太平洋の島々に取り残され物資の補給が出来なくなった日本軍はどんどんアメリカ軍に追い詰められていきます。

 

山本五十六が考えていたのは、アメリカとの戦いに初戦で勝ち講和に持ち込むことでした。

そのために空母と戦闘機の数を増やし、空母を護衛するための駆逐艦を増やした方が現実的だったのですが、アルキメデスの大戦のオチでも大和などの大型戦艦を建造するという流れになってしまいました。

 

アルキメデスの大戦で大和建造の話が現実的になったのとは対照的に、アメリカは真珠湾攻撃の痛手から回復すると空母の建造に力を入れて空母を中心にした機動部隊を太平洋戦争に投入します。

そして、空母の武装を強化するためにレーダーを配備し、VT信管と呼ばれる戦闘機を感知して炸裂する砲弾を完成させます。

これにより日本軍の主力だったゼロ戦アメリカの空母に近づくことすらできなくなりました。レーダーにしても日本軍の持つレーダーは、アメリカのものよりも実用性に乏かったと言われます。

 

徹底的に【実用性】にこだわったアメリカ軍と戦艦大和という【日本海軍の象徴】を作ることでアメリカに勝とうとした平岡案との考え方の大きな違いはここでした。

 

でもなぜ、日本海軍は戦艦大和の建造にそこまでこだわったのでしょうか?

 

東京オリンピック2020とアルキメデスの大戦の戦艦大和はかなり似ている

このように東京オリンピック2020とアルキメデスの大戦の戦艦大和を見比べてみると、かなり似ていることに気がつきます。

アルキメデスの大戦はフィクションですが、まるで史実を見ているようなリアリティがあります。しかも日本の上層部の問題点の核心を突いているんですよね。

 

東京オリンピック2020は1964年のオリンピックと高度経済成長の過去の栄光の象徴であり、戦艦大和は、バルチック艦隊を撃破した日本海海戦の時の栄光という意味で共通していますし、それを再現するために莫大な予算をつぎ込み、【そうせざるを得ない空気感】を利用して断行しています。

 

意思決定をしているのは、年功序列エスカレーター式に決められたルートを通って出世する極めて日本的な軍の上層部であり日本の政治家も同じです。どちらも現実よりも【過去の栄光】が意思決定の判断基準になっています。

 

そして意思決定が【場の空気】に支配されているところも同じで、一度ストップしかけたものが、空気感によって再始動するという流れもアルキメデスの大戦の戦艦大和東京オリンピック2020に共通点がありました。

 

しかも、東京オリンピック2020にしても当初の予算よりも多くの予算がつぎ込まれました。そしてコロナ禍により観客席がほぼ空席となるなど、建造費の多くが結果的に必要なかったものになってしまいました。

 

アルキメデスの大戦の内容が、そのまま東京オリンピック2020でも行われたんですね。

こう考えると恐ろしい映画だなと思いますし、一度は観ておいて損はない映画だなと思います。