こんにちは
とーしばブログのとしです。
前回は『モモ』に登場する灰色の男たちの本当の正体について自分なりの考察をしてみました。
今回は『モモ』に隠された資本主義の闇について考察していきたいと思います。
モモとビビガールの出会い
前回は灰色の男たちの正体について書いてきましたが、この作品の中でもう一つ面白かったキャラクターがいます。モモが円形劇場で拾ったビビガールです。
このビビ人形、みなさんもお分かりのとおりアメリカのバービー人形のパロディです。
アメリカといえば現代の資本主義を代表する国であり、おしゃれな着せ替え人形バービーやボーイフレンドのケン、まさにアメリカの資本主義を代表するようなおもちゃです。
ビビガールは円形劇場に来ていた子供が忘れて行ったものです。大人たちが灰色の男たちによって経済的に豊かになった代わりに子供に与えた大量のおもちゃの中の一つです。
ものが溢れる中で街の子供たちは次々とおもちゃで遊んでは飽きるのループを永遠と繰り返してました。そんな子供が忘れていったおもちゃをモモが拾います。
ビビガールのセリフ
ビビガールは喋るおもちゃです。モモはビビガールに話しかけますが、決まりきったセリフしか言いません。
「こんにちは、私はビビガール完全無欠のお人形です」
「私はあなたのものよ。みんながあなたを羨ましがるわ」
「私いろいろなものが欲しいわ」
このセリフが資本主義そのものを表しているように思います。
今のインスタやフェイスブックに出てくる有名人やセレブの写真はまるで欠点の無いようなものばかりでキラキラしています。
誰もが、そんなキラキラした世界やSNSで注目してされることに躍起になってますよね?
そして、資本主義の消費のループ、新しいものを買っては飽きて、買っては飽きての繰り返し、SNSで周りから注目されることを追いかけ続けるビビガールのセリフは短いですが、現代社会の闇を表したようなセリフです。
そんなモモのところへ灰色の男が現れます。
ビビガールの着せ替えグッズ
灰色の男は言います。
「君はこの素晴らしい人形の遊び方を知らないんだね?」
「この人形と面白く遊ぶには何かあげなくちゃダメだよ。まず、たくさんの洋服がいる!」
「ドレスにミンクの毛皮のコート、ナイトガウン、テニス用の服、スキー用の服、乗馬服、パジャマこれだけある」
「これだけあれば、しばらく遊べる。2、3日してまた飽きたらまたいろいろなもので遊べる」
そしてモモに次々とまた新しいビビガールの着せ替えグッズを見せます。
「ほら、ヘビ皮のバッグに口べに、お化粧グッズ、カメラ、テニスのラケット、人形用のテレビ、ブレスレット、ネックレス、イヤリング、靴下、帽子、ゴルフクラブ、香水」
次々に出てくるビビガールのあまりに多くの着せ替えグッズにモモはただ圧倒されるだけです。
その様子を見た灰色の男は言います。
「次々と新しいものを買えば退屈せずに済む、ビビガールにはボーイフレンドもいるビビガールには女友達もいる。どうだ?これで分かっただろ?退屈する事はない、いくらでも新しいものがあるんだから」
そして持ってきたトランクから次々と新しいものを出します。
資本主義の闇の部分
消費のループを繰り返し続ける資本主義の象徴としてのビビガールと灰色の男たち
子供にも分かりやすく楽しみやすいストーリーの『モモ』ですが、実は資本主義の闇の部分を書いています。
ビビガールの着せ替えグッズのように飽きては新しいものを買い替え、さらに新しいものを買いをひたすら繰り返しています。
ビビガールはそんな消費をひたすら、ひたすら繰り返す社会を表しているのかもしれません。
一見華やかに見える資本主義ですが、その裏で地球の自然と資源を食い尽くし、貧しい国の経済も食い尽くしてしまいます。資本主義の裏の顔です。
目には見えずらいですが、そんな犠牲の上に成り立つ現代の資本主義には多くの欠点や危うさがあります。
ひたすら繰り返し新しいものを求め続けるビビガールのセリフはそんな危うさの象徴だと思います。
資本主義社会の成功とは?
灰色の男は言います。
「人生に大切なものは一つしか無い、何かに成功してたくさんの物を手に入れること、他の人より成功すること、偉くなり金持ちになった人間には友情だの愛だの名誉だの、何もかも集まってくる」
「友達は君からどういう利益を得ているか?なんの役に立ってるか?成功に近づき金を儲け、偉くなることを助けているか?君はそういうことを邪魔している。君は友達に害悪を与えている。」
灰色の男はモモに自分たちの計画を邪魔されないように街の人々からモモを遠ざけようとします。
これらのセリフ、成功してお金持ちになり成功や名誉や全てを手にする資本主義の成功者像そのものです。
この世の中の人が正義だと信じていることをあえて、灰色の男に言わせていることがエンデの警告だと思います。
ひたすら、ひたすら消費を繰り返して利益とお金を追求し続ける現代社会への警鐘が『モモ』には込められています。
モモは現代の大人が読み解くと面白い
『モモ』のストーリーは子供が楽しめるように出来てますが、実は現代の大人が読むべき名作です。
この作品が書かれた時代はちょうど東西冷戦でアメリカとソ連が対立していた時代、ジョージ・オーウェル『動物農場』がソ連の理想と現実を表しているとしたら、ミヒャエル・エンデ『モモ』はアメリカの資本主義の危うさを指摘している作品です。
さらに現代の資本主義の問題にも通じたテーマに入ってるところがこの作品の面白いところです。